核融合炉の第一壁にはプラズマ汚染対策のため、低Z材料としてのセラミックスの使用が検討されている。しかしセラミックスの照射損傷に関するデータは少ない。特に核融合中性子の照射による損傷の研究は殆どなされていない。本研究は高温構造材セラミックスとして最近注目を集めている【Si_3】【N_4】について、14MeV核融合中性子による照射を行ない照射にともなう損傷組織を透過電顕で詳細に観察を行い、本材料の照射挙動に関する基礎的な知見を得ることを試みた。 試料としては【Si_3】【N_4】焼結体を用い、3mmφデイスクを本科学研究費補助金で購入した試料局所研磨装置により薄膜化した。この試料を米国LLNLのRTNS=IIにより14Mev中性子で室温で1.15X【10^(18)】n/【m^2】まで照射し、その微細組織を電顕観察した。 照射後のマトリックス結晶相には中性子照射によるカスケード損傷と確信できるような構造欠陥を見出すことは出来なかった。また【Si_3】【N_4】結晶粒内にいくらか存在していたgrown-in転位にも照射損傷の証拠は認めず、【Si_3】【N_4】それ自体は極めて耐照射損傷性に高い材料であると結論できる。これに対して粒界は照射に対してより敏感で、粒界にそって照射損傷(隙間)が明らかに観察された。この隙間はHeあるいはArイオン照射されたこの材料で観察された隙間と酷似している。HeあるいはArイオン照射された【Si_3】【N_4】においては照射によって粒界相が優先的にアモルファス化し結晶相との界面にそって隙間が形成されることが観察されたが、14MeV中性子照射によっても同様の粒界相のアモルファス化が起きたものとと思われる。 このように【Si_3】【N_4】結晶それ自体は極めて照射損傷に対して高い低抗を有するが、焼結助剤として添加されている粒界相は照射に対してより敏感であり、【Si_3】【N_4】焼結体を核融合炉材として用いるためには適切な焼結助剤の選択が必須であると結論した。
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