アドバンス燃料プラズマに特有の衝突素過程で、従来考慮されることの少なかったものに、反応で生じた高エネルギー粒子と燃料イオンの間の核弾性散乱(NES)がある。NESは散乱当りのエネルギー変化が大きいので反応生成物の減速を速め、イオン加熱を促進する。また反跳イオンをつくり、正味の反応率をふやす可能性を持つ。 本研究では初めにNESを考慮して減速過程を解析し、次にNESがアドバンス燃料炉の点火条件と燃焼動特性に及ぼす影響を調べた。減速過程の記述には多群法を用いた。対象とした炉はトカマク型CAT-D炉と磁場反転ミラー(FRM)方式によるDD【^3He】炉である。 主な結果は以下のとおりである: 1.核弾性散乱(NES)を考慮すると点火条件が緩和される。所要n【Γ_E】値の低下率はシンクロトロン放射の壁面吸収率【K_C】に依存する。例えば【K_C】=0.1%の時〜20%、【K_C】=1%の時〜50%である。これはCAT-D炉、DD【^3He】炉のいずれについても同じである。 2.NESを考慮すると点火プラズマの熱的不安定性が増し、摂動に対する応答が速くなる。CAT-D炉の場合、不安定性の臨界温度が20keV上昇する。DD【^3He】炉ではこの上昇は30keVである。しかし、減速時間を考慮しない従来の計算に比べると、本計算で得たプラズマの時間的変動はゆるやかであり、燃焼制御は可能である。例えばCAT-Dトカマク炉の場合には膨張・圧縮法と燃料注入率制御の併用で安定化が得られる。DD【^3He】炉に対しては燃料注入率の制御だけで十分である。
|