本研究の初年度における最大の成果は、1984年からBC37年にいたるヒノキの標準年輪変動連続パターンの完成である。その有効範囲は、現生木による検討では 岐阜県から高知県までの表は本側、遺跡出土材については、東京都から広島県までの13都府県にわたることもまた確認できた。この標準パターンの完成によって、この地域の遺跡の出土品あるいは美術工芸品の年代決定について、すでに応用研究を開始しはじめている。また、このヒノキの標準年輪変動連続パターンとの対比研究によって サワラとヒバの年輪変動もヒノキのそれと相互相関がきわめて高い関係にあることが確認できたので この樹種を材料とした製品の応用研究も可能となった。その他の樹種については、コウヤマキの標準年輪変動連続パターンを、8世紀を下限とする672年分、さらにアキタスギを現在から210年分を作成した。スギに関しては、アキタスギと三重県産スギとでは相関関係がきわめて低いことも確認できた。 本年度設置した、ソフテックス撮影装置、画像読取装置、スーパミニコンピュータは、それぞれ調整を完了し、作動を開始した。その結果、エックス線画像による年輪計測は、年輪幅、仮導管密度の最高値と最低値、早材部と晩材部、以上5要素に分解することが可能となった。それぞれの有効な測定利用法の開発は来年度以降の課題である。 年輪による古気象の復原研究については、本年度はまず、各種の時系列解折プログラムを開発するとともに、それを年輪変動の時系列に適用して、年輪の短期的ならびに長期的変動の周期性を検討した。つぎに、気温と雨量のデータについても同様な解折をおこない、卓越する変動周期を明確にした。さらに、年輪と気温、年輪と雨量、それぞれの間の相互相関を計算し、たがいの相関性がどの周期帯で高くなるかなど、解折的研究をおこなった。
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