研究概要 |
化合物半導体集積回路技術はその基本構成要素である絶縁体-半導体界面の理解・制御・最適化がなされておらず、回路の微細化・高密度集積化・高速化の障害となっている、本研究の目的は、化合物半導体-絶縁体界面の基礎的な物性を解明し、界面物性を原子的な尺度で制御する新しい技術を創造し、化合物半導体集積回路技術の今後の発展に突破口を開くことにある。 本年度は、化合物半導体-絶縁体界面の電子的特性と界面の微視的構造・化学的結合状態との相関を探り、界面制御の指針を確立する目的で次の成果を得た。[1]本研究の「表面乱れモデル」を、絶縁体-半導体,金属-半導体,半導体-半導体の界面をU字形連続界面準位分布と混成軌道エネルギで統一的に理解する「統一DIGSモデル」として発展させた。[2]RBS法により絶縁膜堆積による界面の格子乱れを直接検出するとともに、膜の組成・熱的安定性を評価した。[3]極微小領域分析観察装置による界面格子像の直接観察により、GaAs,InP,Siの絶縁体-半導体界面の格子乱れを直接検出し、かつ乱れと界面の電子的特性との強い相関を見出した。[4]超清浄環境絶縁体形成分析装置により界面制御層を形成しXPS/UPS法により結合状態とバンドの曲がりを評価した。InPでは、薄い陽極酸化膜の組成・結合状態と界面制御層としての有効性を示し、かつ化学エッチやAsクリーニングを含む種々の表面処理と表面フェルミ準位との関連を明らかにした。GaAsでも種々の表面処理や吸着種と表面フェルミ準位との関連を解明し、IBMグループの純水中光化学酸化の有効性に対しては否定的な結果を得るとともに、それに代わる新しい処理プロセスの可能性を見い出した。[5]界面準位の電子的挙動を詳細にモデル化し、C-V特性の完全な計算機シミュレーションに成功した。さらに、界面準位による界面再結合過程のシミュレータを開発した。
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