研究概要 |
昭和61年度の研究計画では、「新しい表面原子配列構造観察装置の開発」及び「S;Ge上の表面構造の解明」を行なうことであり、研究はほぼこの目的に沿って進められてきた。前者の装置を作成するには、(1)電子ビーム径が5【A!°】、(2)ビーム電流が7×【10^(-11)】A,(3)ビームの高度の安定化,(4)ビームのドリフトの除去,(5)【10^(-10)】Torrの超高真空,(6)大きな立体角でのX線の検出など多くの困難をともなう。これらのうち(3),(4),(5),(6)は本装置に要求される新しい条件であり、これらを克服するために以前より検討を加えてきたが、本年度に具体的に作成を行なった。上記条件のうち(1)と(2)については、試料を対物レンズの中に挿入する「インレンズ方法」を採用して、試料付近で特にビームを集束させるようにした。(3)については各種の電源の安定化,冷却水の温度制御,電気的及び磁気的シールド,除振対策などを行なった。(5)については装置全体をベーキングできるようにし、(6)については特別なX線の検出器の開発を行なった。更に走査像のデータ処理をしたり画像処理を行なうための「電顕データー処理装置」を購入し、これにより条件(4)も解決の見通となった。これらを組合わせて「表面原子配列構造観察装置」は作成されたが、まだ調整不充分であり、新しいデータが得られるには到っておらず、引続き研究を続行する予定である。 次に「Si,Ge上の表面構造の解明」を目的とした研究では、我々は「新しい原理に基づく粒子線アナライザー」を発明した。これに関する2つの特許の申請を行なうと同時に、この新型アナライザーによる実験のできる「光電子分光用超高真空槽」を購入し、実験中である。さらに従来の装置による研究としては、我々の開発したRHEED-TRAXS法の機構や応用的研究、イオンビーム励起オージェ電子分光によるSi(111),(001)表面の研究などを行ない、多くの新しい成果が得られた。
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