血糖降下, 血圧降下ペプチドの生合成調節機構

1987 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 60065004
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 岡本 宏 東北大学, 医学部, 教授 (60025632)
• 研究分担者: 山本 博 東北大学, 医学部, 助教授 (00115198)
• キーワード: インスリーノーマ遺伝子 / rig / アンチセンスオリゴヌクレオチド / nuclear oncogene / 再生膵B細胞 / reg / pancreatic polypeptide / モザイク進化

研究概要

1.ラットインスリノーマからgenomic rigを単離し, その全塩基配列を決定した. その結果, rig遺伝子は全長2150塩基対で3個のexonと2個のintronからなり, また, Rig遺伝子の5′隣接域約1キロ塩基対中に転写調節elementすなわちTATA box, CAAT box, 12個のenhancer core配列が存在していた.
2.化学合成したrig蛋白質を抗原として抗体を調節し, 免疫組織化学染色体, Westernブロッティングにより, rig蛋白質が核に局在することを明らかにした. また, rig mRNAに相補的なアンチセイスオリゴヌクレオチドをインスリノーマ細胞に注入すると, DNA合成が著明に低下することが見い出され, rigはDNA合成に関与する新しいnuclear oncogeneと考えられた.
3.ラット再生膵B細胞で特異的に発現している転写産物を単離し, その構造を決定した結果, この転写産物は分泌蛋白質と推理される165アミノ酸の蛋白質をコードしており, その塩基配列・アミノ酸配列は既知のどの遺伝子や遺伝子産物とも異なることから, 対応する新しい遺伝子をreg(regenerating gene)と命名した.
4.VIP同様C末端がアミド化されているPancreatic PolypeptideのcDAおよび遺伝子を単離し構造を決定した. その結果, Pancreatic Polypeptide遺伝子は進化速度の速い領域と遅い領域からなることを見い出しし, 「モザイク進化」という遺伝子進化の新しい考え方を提唱した.
本年度購入の炭酸ガス細胞培養装置, マイクロ冷却遠心機, 上皿電子天秤はインスリノーマ細胞へのオリゴヌクレオチド注入実験, 微量組織・核酸の分離, 秤量などに有効に使用された.

研究成果

• [文献書誌] C. Inoue,K. Shiga, S. Takasawa, H. Yamamoto, and H. Okamoto: Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.84. 6659-6662 (1987)
• [文献書誌] C. Inoue, K. Igarashi, M. Kitagawa, K. Terazono, K. Obata, K. Iwata, H. Yamamoto, and H. Okamoto: Biochem. Biophys. Res. Commun.150. 1302-1308 (1988)
• [文献書誌] K. Terazono, H. Yamamoto, S. Takasawa, K. Shiga, Y. Yonekura, Y. Tochino, and H. Okamoto: J. Biol. Chem.263. 2111-2114 (1988)
• [文献書誌] H. Yonekura, K. Nata, T. Watanabe, Y. Kurashina, H. Yamamoto, and H. Okamoto: J. Biol. Chem.263. 2990-2997 (1988)
• [文献書誌] T. Yamagami, K. Ohsawa, M. Nishizawa, C. Inoue, E. Gotoh N. Yanaihara, H. Yamamoto, and H. Okamoto: Ann. N.Y. Acad. Sci.(1988)
• [文献書誌] 山本博,高澤伸,井上千代子,志賀清人,寺薗公雄,北川元生,山上孝司,岡本宏: 現代化学. 12. 52-60 (1987)
• [文献書誌] S. Ohgaku, H. Morioka, T. Sawa, S. Yano, H. Yamamoto, H. Okamoto and Y. Tochino: "Best Approach to the Ideal Therapy of Diabetes Mellitus" Excerpta Medica, 754 (1987)
• [文献書誌] H. Okamoto, H. Yamamoto, S. Takasawa, C. Inoue, K. Terazono, K. Shiga, and M. Kitagawa: "Frontiers in Diabetes Reaearch" John Libbey & Co. Ltd., (1988)
• [文献書誌] K. Ohsawa, T. Yamagami, M. Nishizawa, C. Inoue, E. Gotoh, H. Yamamoto, and H. Okamoto: "Gunma Symposia on Endocrinology" VNU Science Press BV, IN PRESS (1988)
• [文献書誌] 高澤伸,山本博,井上千代子,志賀清人,寺薗公雄,北川元生,山上孝司,岡本宏: "糖尿病動物1" 医薬ジャーナル社, 305 (1987)
• [文献書誌] 寺薗公雄,山本博,高澤伸,志賀清人,米村豊,栩野義博,岡本宏: "糖尿病動物2" 医薬ジャーナル社, (1988)