当班では、脊椎動物の社会を正しく比較可能な形で把握することにより、脊椎動物の社会構造の一般論を確立することを当面の目標として魚類・鳥類・哺乳類の3つの重要な生活型グループ毎に研究を進めてきた。まず魚類については、他の脊椎動物については、他の脊椎動物に比較しても、極めて多様な繁殖様式がみられるので、保育形態の多様性(性など)がそれぞれの婚姻組織のパターンと深くかかわっており両者の対応により魚類各種のもつ社会構造を統一的に理解できることをベラ科・モンガラカワハギ科・カワスズメ科などの海産魚類(桑村・柳沢・西平)のみならず、カンキョウカジカやサケ・マス包など淡水魚(後藤・前川)も含めて明らかにした。また魚類では性転換が社会構造と極めて深く関連していることを明らかにした(中園)。鳥類については、なわばり性の社会とコロニー性の社会に分け、それらの社会組織をCrookやLackの考えではなく「雌と雄の関係のあり方」という視点でとらえ直し、ホオジロ・オナガ・コサギ・イソシギなどの代表的な種の社会構造を明らかにした(山岸・斎藤・中村)。その結果、ソシオバイオロジーでは問題にされていない非繁殖期の採餌習性が社会構造を把握する上で重要であることを明らかにした。またカッコウ・ホトトギスなど托卵性鳥類の繁殖様式の適応的意義について調べたところカッコウはhostの巣の存在様式に応じてレック的な社会からなわばり的社会まで可そ的な社会構造をもつことがわかった(中村・安藤)。哺乳類については、日本産リス科動物の社会組織が♀のなわばり社会であることを明らかにした(川道)。またネズミ類やニホンカモシカ・ニホンジカなど(小野・土肥・村上・三浦)を含めて哺乳類の社会構造は基本的に繁殖期の社会だけでなく、非繁殖期を含む生活史を通じて個体の行動圏やなわばりの保持が重要であること、密度やhabilotの構造とも関係して変化させ得る程可そ性に富んでいる事が判った。
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