研究概要 |
最終の第3年度を終えたが、予期以上の研究成果をあげることができたものと考える。筆すべき研究成果の概略は次の通りである。 【◯!1】感染性下痢原因菌のうち、類似した症状を発現する菌種間では極めて分子構造・免疫学的性状の酷似した蛋白ないしペプチド毒素を産生していることが証明された。この一連の研究によって、どのペプチド構造が毒素の組織・細胞特異性を担っているかを解明する突破口が開かれた。また人工的に変異原物質を作用させて変異株を誘導・単離し、毒素活性のうちレセプターとの結合能のみを欠除した変異蛋白毒素を分離精製してアミノ酸構造を解析することによって、どのペプチド部分がレセプターとの結合能を担っているかを解明する研究モデルを開発することができた。 【◯!2】毒素感受性がいろいろ異なる一連の培養細胞変異株と各種ハイブリッド毒素を用いたジフテリア毒素の研究は、A-Bサブユニット構造を持つ蛋白毒素の標的細胞内侵入機構研究のためのモデル研究として多くの示唆に富んだ研究成果をあげることができた。 【◯!3】腸炎ビブリオの耐熱性溶血毒(TDH=即時型致死毒)の構成特定アミノ酸残基の化学的修飾による作用活性中心の解明、Vibrio vulnificus,NAG vibrioの産生する溶血毒の病原因子としての作用機序の解析、ウェルシュ菌α毒素、Θ毒素の標的組織・細胞に対する特異作用発現機構並びに分子構造論的解析も顕著な成果をおさめることができた。 【◯!4】百日咳菌の壊死毒が高純度に世界で初めて高純度に精製され、本毒素が皮膚毛細血管平滑筋細胞に直接作用してその収縮を惹起させ、皮膚組織局所の乏血・酸乏が起って乏血斑を伴う出血壊死斑が発現することを明らかにした。その他内毒素の研究なども順調に進展した。 本研究班活動を通じ、専門分野の異なる研究者がお互いに理解し合い、共同研究を続行する動きが強くでてきたことも大きな成果である。
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