1.実施した調査:1)路上スピード測定部門:実勢速度測定、50km/h地点・4地点、40km/h地点・2地点、法定速度・2地点、スピード取締実施・3地点。2)態度測定部門:違反者、運行管理者、安全運転管理者、教習所指導員、一般運転者、大学生各300人以上。 2.結果の概要:1)路上測定部門:実勢速度の平均は規制速度の+5〜12km/hの範囲にあり、法定速度を上回るインフォーマルな規範が一般的に存在する。取締実施時においてはその平均速度は法定速度を下まわる。取締への反応は一般に過剰である。実勢速度と取締速度とのSDは後者が小さく、高速側が脱落する。取締実施の他者への通報行為の一般化が存在する。2)態度測定部門:スピード走行項目への反応結果の分折から、「模範傾向」「人並傾向」「スピード傾向」の3因子が確認され、公式規範-非公式許容規範との関係で、運転者は以下の3群に分けられた。ア)模範型:公式規範に従う、非公式規範はなし、厳格な順法型。イ)人並型:非公式規範に従う、基本的には順法だが、一定限度の逸脱を非公式規範により正当化、悪質な違反はしない。ウ)飛ばし屋:規範とは無関係、スリル傾性。取締への対応:模範型、非公式規範の存在と内秘的違反許容範囲の存在に反発、厳格な取締を期待。人並型、非公式規範の範囲内での取締に反発不満感大。飛ばし屋、取締への過敏な反応(検挙囲避への強い傾向)。 3.総括的検討:運転者は、公式的法規範・公式規範+αの非公式規範・実際の取締が施行される内秘的許容範囲・特定の運転状況下の自車前後の走行状態、との動的関連の中で速度を位置づける事となる。このように並存する各種規範と規制取締活動の自由裁量性が一般には法順応学習を阻害する傾向があるが、効果的な方策としては上記運転者群に応じた規制指導処置が必要とされる。特に多数を占める「人並」群の軽度な違反の処置が順法模範か、法反発かへの分岐点となる。
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