前年度(1984年度)に実施した自動車事故による後遺障害等級認定事例の収集に加えて本年度(1985年度)は、全国各地の損害保険各社の査定担当実務者によるWHOの国際障害分類を用いての後遺障害調査票の記載2476件を収集した。 これらの実態調査から得られた成果は、1.自動車事故の全後遺障害認定の50%以上を占めているいわゆるむち打ち症は、真の後遺障害として認定するに足る医学的または統計学的根拠を持たないものであることが再確認された。 2.労災保険の「障害等級表」をそのま準用している自動車損害賠償保障法施行令第2条の「後遺障害等級表」は、部分的改正では国際的評価に耐え得るものではなく、抜本的改正を必要とし、しかも、その基盤をWHOの国際障害分類に求め、自動車事故による身体の構造と外観や臓器の機能障害(臓器レベル)における変調を前提に、個人の動作・活動の制限(個人レベル)における能力低下を一次障害とし、個人とその環境に対する個人の適応を社会的不利の諸次元(オリエンテーションの関する不利、身体の自立に関する不利、移動性に関する不利、作業上の不利、社会統合の不利、経済的自立における不利など)でとらえたものを二次障害として評価・活用する方途を探求した。 3.国際障害分類の各分類細目のチェックは、損害保険査定担当実務者に解説書を供することによって履行可能である。 自動車事故後遺障害評価表(等級表)の枠組としては、(1)介護がなければ生命の維持ができないもの、(2)介助がなければ身辺の生活動作ができないもの、(3)身辺の生活動作が制限されるもの、(4)日常活動における各種の能力が制限されるもの、以上の(1)〜(4)を柱に後遺障害の程度を10段階ぐらいに組合わせ、これらに社会的不利の諸次元をどのように組込む(基本表のほかに補正表を作成する)か、検討を加えており、本研究は期待通りの成果をあげつつある。
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