昭和60年度は59年度に行った知識ベースの情報処理技術としての面及び応用の面の両面にわたる基礎的な研究を経て、これをさらに進展させ、基礎と応用の両面で研究上の進展が得られた。 〔1〕 知識表現と推論に関する研究;知識処理の基礎として最も重要な知識表現と推論に関しては、本年度は研究班としての大きな進展があった。それは従来の知識工学の限界を乗り越えるものとして、モデルの概念を明確にすべきであるという認識が得られたことである。大須賀はモデルの概念を実現し得る知識処理言語KAUSのもとでこれを実証した他、石塚も同様の考え方を打ち出している。この他、小林は知識ベースを用いた協調型問題解決の方式、石塚はあいまい性を含むシステムの研究を進めた。 〔2〕 知識の利用に関する研究;これについては多くの分野で従来の丞術を越えた成果が得られている。自然傾語処理では田中(穂)、吉田、が知識ベース方式による自然言語処理の方式を開発している。医療面では小山が医療用知識ベース・システムを、技術開発の面では、佐々木が反応設計の分野で大きな成果をあげ、大須賀は知的CADシステムの開発で成果をあげている。 〔3〕 知識ベース・システム構築;大須賀はKAUSに基づく知識ベース・システム構築を進め、田中及び林は知識ベースとデータベースを含むシステムとその高速化に新しいシステム方式を開発した。 〔4〕 知識の獲得に関する研究;知識の獲得は未知の部分の多い分野であるが大須賀は知識ベースとデータベースの統合化および統計処理の技術により、データからの知識化方式を研究しており、田中(穂)、吉田は自然言語を通しての知識獲得、特に辞書の作成に成果を得ている。
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