研究概要 |
本研究は、複合脂質の合成,分解を含むアセンブリーの機構を探る事により、細胞情報伝達等における生体膜脂質の機能発現の機作を解明する事が目的である。以下の様に、三分野に大別され、成果が得られている。 1.リン脂質研究グループ: (1) 活性化に伴い血小板がら放出されるホスホリパーゼ及び血小板膜にとどまるホスホリパーゼについて精製し、その構造及び性状について一部明らかとなった。(2) 炎症のケミカルメディエーターとして注目されている血小板活性化因子(PAF)の定量法として選択イオン検出法を応用した。起炎刺激下、ヒト好中球より産生されるPAFの化学構造もAGEPCであった。また、灸刺激により皮膚筋組織よりPAFの生成が確認された。(3) 培養細胞(チャイニーズハムスターV79)より不飽和脂肪酸要求性の細胞を単離した。また、高感度リン脂質分子種分析法を確立した。これらを用いて、リン脂質の細胞内トランスロケーションを解析中である。 (4) 細胞膜を介した情報伝達機構において重要な役割を演じているプロティンキナーゼCのモノクローナル抗体を作成した。更に、リン脂質単分子層膜による本酵素の活性化に成功した。 2.糖脂質研究グループ: (1) アデノウィルスによるラット3Y1細胞の形質転換に伴う【G_(D3)】ガングリオシドの新生は、【G_(D3)】合成酵素の活性化にもとづくことが示された。(2) マウス肝のガングリオシド【G_(M1)】発現が、【G_(M1)】合成に関与するガラクトース転移酵素活性によって制御されていること、更に、この活性を制御する遺伝子は第17染色体のH-2外動原体側にあることが示された。 3.ステロイド誘導体研究グループ: ステロイド側鎖へ立体選択的にエクダイソン型側鎖を導入できた。その応用として、甲殻類のホルモン、2-deoxycrustecdysoneが合成できた。
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