本年度の研究成果を、刺激受容部に関するものから、分子間相互作用に関するものへと要約する。 小林・鈴木(英):ロドプシンのピコ秒時間領域での反応初期過程においていくつかの反応回路がある。一方、光吸収直後の励起状態及びそれが結合距離変化を引き起こしたものを区別し、光異性化が、これら二つの励起状態間の非断熱遷移であることを示唆した。 前田・北川・折井:【H^+】ポンプ機構を持つバクテリオロドプシンのpk9のアミノ酸残基を同定しこれが情報を伝達する機構に影響することを明かにした。またチトクロム酸化酵素では、【H^+】ポンプと電子移動のカップリングに鉄-ヒスチジン結合が関与する可能性および、pkが中性付近である解離基の分子内電子移動過程への寄与が示唆された。 鬼頭・鈴木(龍):ロドプシン発色団レチノイドを、オキシム誘導体または直接抽出によって定量する方法を確立した。甲殻類では、視物質は暗黒中でも代謝が進み、11-cisレチナールは、11-cisVAエステルから補給されていることが示唆された。 谷村・塚原・藤:ショウジョウバエの、三種の光受容分子の発色団はすべて3-ヒドロキシレチナールである。モノクローン郁体を作成し、R1-6とR7-8ではオプシンが免疫学的に異なることを示唆した。また、視物質が存在する微絨毛の内部に13nmの間隔で側枝を出す芯フィラメントが確認された。 猪飼:ロドプシン再生時の、GTPアーゼ活性化能が燐酸化によって制御されているかどうかを検討するため、ロドプシンキナーゼおよびホスホロドプシンフォスファターゼの精製を試み、両活性を分離することが出来た。 大西:裏打ちタンパク質によるバンド3のlateral motionの制御機構についてモデルを提出した。 小坂:ペプチドとGABAが同一ニューロンに含有されていることが明かとなった。 物井:界面に微細なポケットが存在するとその内部では電気的相互作用が条件により著しく増大または減少することが判明した。
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