この研究の目的は、生体における電気信号の発生に関与する刺激受容分子、情報伝達分子、イオンチャネルなどの分子を同定・単離し、人工膜上に再構成しそれらの分子の機能を発現する条件・過程を解明し細胞における電気信号発生過程を統一的に理解することである。その結果以下のようなことが分かった。 1.脂質平面膜にイオンチャネルを組み込んでその性質を調べる方法では、カルシウムチャネルの研究を重点的に行った。筋肉のT管膜に3種類、テトラヒメナ膜に1種類が観測された。(曽我部・葛西) 2.再構成膜小胞で、イオンチャネルを含むものと含まないものが、KClの密度勾配遠心法で分離できることを示した(葛西)。 3.アセチルコリン受容体などのmRNAを卵母細胞に注入し、その発現によりイオンチャネル形成の時間経過をしらべ、新しい材料としてイモリの卵母細胞の利用に成功した(青島)。 4.閃光架橋法でアセチルコリン受容体のサブユニット間に架橋し、それらの相互作用、時間経過の測定の可能性を示した(須藤)。 5.脂溶性イオン電極を用いて、膜小胞の膜電位を測る方法で、イオンの膜への吸着の補正をする方法を確立した(加茂)。 6.胃ベシクルで、S-S架橋によってClチャネルが開くが、これが【H^+】-ポンプそのものであることを示した(竹口)。 7.小腸刷子縁膜小胞のジペプチドの取り込みとHとの共輸送のメカニズムを明らかにするため、等価回路モデルを用いて解析した(星)。 8.大腸菌にはあるがサルモネラ菌に存在しないマルトース走性の原因として、TarSがマルトース結合タンパクと相互作用しないためであることを遺伝子移入法で示した(今栄)。 9.1種のグルタミン酸受容体しかもたない神経細胞の培養に成功し無血清培養法の検討も行った(福田)。
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