本研究班の研究では食品の受容性に食品の持つ感覚的要素がどのように関係しているかを食品の化学的並びに物理的性状と、食品を摂取する生体側の感覚能との両面から系統的に解析した。 生体側の研究は6名の班員がこれを担当した。河村(甲子園大)はハムスター大脳皮質味覚領ニューロンの機能解析を、栗原(北大)はラットの味覚神経線維の反応分析を、小野田(群馬)はイヌの大脳皮質嗅覚領ニューロンの機能解析を、大村(九大)はサルの視床下部食中枢および満腹中枢より空腹物質および満腹物質の抽出、同定を行った。小野(富山医薬大)はサルにつき好きな食物と嫌いな食物を視覚的に弁別する行動の脳機序を解析した。また森本(阪大)はウサギを用い、食品の物性に適合した咀嚼動作を行うのに大脳皮質咀嚼野ニューロンがどのように関与しているかを分析した。 食品側の研究は7名の班員がこれを担当し、加藤(東大)は肉エキスの熟成による味の変化と遊離アミノ酸の量および質との関係を、鴻巣(東大)は水産食品にっきアミノ酸含量と味との関係を、鬼頭(京大)は大豆加工過程で発生する大豆嗅の生成機序を、小林(お茶大)はかつおぶしのダシ汁の香気成分を分析した。土井(京大)、中村(名大)は食品のテクスチャーに関する化学反応を分析し、本間(お茶大)は食品加工中に生成される褐色色素と金属イオンとの相互作用が食品の色調や抗酸性化に関連することを明らかにした。 各班員はそれぞれ関連学会に研究成果を発表すると共に、昭和60年10月には2日間にわたり班の勉強会を箱根凌雲荘で開催し、班員相互の研究協力ならびに相互理解につとめた。 以上、本研究班では食品にとって極めて重要な感覚機能を学際的に且つ綜合的にとりあげた点、今後の食品研究の発展に新らしい視点を与える有意義な研究成果がえられている。
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