大脳基底核疾患の発症機構を、分子・細胞レベルの神経生物学のミクロの視点と、臨床解析のマクロの視点とを統合して解明する目的で研究を継続している。主要な研究実績として、(1)黒質網様部より中脳橋被蓋ニューロンへの抑制性投射の存在の証明、(2)脳血管性パーキンソニズムの基底核ニューロンの定量組織学的解析、(3)基底核のカルモデユリン依存性プロテインキナーゼの解明、(4)基底核のGABAの分布の解析、(5)ドーパミン神経毒MPTPと類縁化合物によるインビトロとインビロでの基底核チロシン水酸化反応の阻害の解明、(6)線条体でドーパミン神経終末のエンケフアリンニューロンとのシナプス形成の立証、(7)日本のハンチントン病のDNAマーカーを用いた最初の遺伝子連鎖の研究、(8)カイニン酸によるハンチントン病モデルサルの黒質のGABAの減少とチロシン水酸化酵素の増加の証明、(9)パーキンソン病に有効性が立証されたL-スレオードプスの神経終末内でのノルアドレナリンへの合成の証明、(10)ノルアドレナリンニューロンを破壊したラットでのL-スレオードプスの脳内移行とノルアドレナリンの増加の証明、(11)脳虚血ラットでの各種神経伝達物質の異常の差異の解明、(12)基底核のムスカリン性アセチルコリン受容体の結合能のソマトスタチンによる変化、(13)ゼノパス印細胞へのmRNA注入によるレセプター・イオンチャンネルコンプレクスの誘導、(14)ハンチントン病のベンゾジアゼピン受容体のポジトロンCTによる解析、(15)隨意運動発現に関与する被殻ニューロンの活動特性の解明、(16)自由に動くネコの基底核のニューロン活動の記録法によるニューロン発火と運動の相関の解析、(17)赤核を介した学習運動のノルアドレナリン系刺激による条件づけの促進の立証、(18)ヒトの抗重力筋活動性に及ぼす交感神経の役割、(19)パーキンソン病の迅速隨意運動機能の下隨前経骨筋の等尺性隨意収縮による視標追跡法による検束、など新しい進歩が得られた。
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