研究概要 |
1.抗PHFモノクローン抗体の性質 ハイブリドーマDF-1は安定に高力価のモノクローン抗体を分泌する。 オクタロニー法により本モノクローン抗体がIgM型のラット抗体であることを決定した。 ホルマリン固定したアルツハイマー脳切片(海馬)において神経原線維がとくに強く反応しているのがわかる。 また細胞質全体にわたって一様に抗原物質が存在していることが示された。 部分精製した神経原線維変化を試料とした場合、アルツハイマー神経原線維が強く反応する一方、細胞質性の抗体陽性反応がほとんど消失した。 このことはもともと脳組織に含まれていた細胞質性の抗原物質が遠心操作によってアルツハイマー神経原線維画分の中には回収されないことを意味しており、遠心上清画分に除去されたことを示唆する。 金コロイド修飾二次抗体を用いた実験では、金コロイド粒子がPHF分子上に分布することが確認された。 2.抗原分子の同定 アルツハイマー病および正常脳のホモジェネートを超遠心の後、その上清画分と沈渣画分を別々に取り、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動をおこなった。 ニトロセルロースへ転写後、ABC法によって抗体結合分子つまりPHF構成成分を同定した。 PHF本体に相当する分離ゲル上端部分がアルツハイマー脳沈渣画分にのみ特異的に反応した。 上清画分では、両脳組織に共通して分子量約5,000のタンパクが反応した(以下このタンパクを5Kタンパクと称する)。 3.5Kタンパクの精製 抗PHFモノクローン抗体と反応する5Kタンパクを脳ホモジェネートから超遠心上清画分として得る。 精製は硫安分画とHPLCによりおこない、95%以上の純標品を得た。 さらに5Kタンパクのアミノ酸配列のうち、N末(メチオニン)から34残基が決定された。
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