初年度に引続いて、がん遺伝子の検出と、機能解析について、主としてヒトゲノムと、ヒトがん材料の面から研究を進めた。 1.yes遺伝子:プロトyes遺伝子を決定し、ヒト染色体18g21.3にアップした。さらに、fgr遺伝子に対するプロトオンコジンも決定し、ヒトfgrゲノムの解析から、fgr領域は、アクチン様遺伝子領域を含まないことを明らかにすると共に、そのエクソン・イントロン接続部位は、srcやyesと一致することを見出した。 2.erbB-2の解析を進め、ヒト染色体では、17q21にマップされることを明らかにすると共に、erbB-2のゲノム構造がerbB-1に非常に類似していることを明らかにした。さらに、そのm-RNAに対するc DNAをクローニングし、全構造を決定した所、その産物はEGFレセプターに非常によく似た蛋白質を作ることが明らかとなり、何らかのペプチド因子のレセプターと推定される。又、erbB-2は、腺細胞上皮由来のがんで、遺伝子増巾のみられる例がかなり発見された。 3.srcをもった強発がん性レトロウイルスの誘発については、S1とS2の2新種ウイルスゲノムの解析が進み、その活発のための5′側組かえ機構がDNA組かえとmRNAスプライシング、3′側の組かえが、逆方向にみられる相補性領域を仲介とした、逆転写時の鋳型RNA乗かえによると考えられる結果を得た。 4.昨年分離した3種の新しいヒトトランスフォーミング遺伝子の中で、1つはrufと決定した。他については、既知の20種ほどのテストで対応するものは見出せず、現在解析中である。 5.erbB-2のC末端を認識する抗体を作成し、erbB-2の産物の解析を行っている。
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