研究概要 |
再生可能な植物系炭素資源を化学資源として有効利用することは、資源問題の見地から極めて重要な研究課題である。 このために、 1.植物系芳香族炭素資源として代表的なリグニン、 2.炭水化物から誘導されるフラン誘導体、 3.植物中に含まれる樹脂および精油に着目し、これらの有用物質への有効な変換反応を開発することを目的として研究を行った。 本年度の成果は次のようにまとめられる。 1.リグニンの微生物、オゾンによる変換 リグニン分子中に最も多く存在する化学結合はアリールアルキル結合である。そこでこの結合形式を有するモデル化合物に対して、既に分離した好アルカリ性細菌を作用させて、その生分解機構を明らかにして有用なリグニン生分解生成物を得るために適する菌株を選択し、この菌株を用いてリグニンおよびリグノセルロースの生分解を実施した。また、各種工業リグニンの構造上の特性を明らかにするため、徹底したオゾン酸化を行った。次いで工業リグニンを経済的に改質することを目指して、爆砕リグニンのアルカリ水溶液中での均一なオゾン化を行い、収率よく、水溶性の生成物を得ることができた。 2.フラン誘導体の有効利用 電極酸化反応を鍵反応として利用して、フラン誘導体の1,4-ジカルボニル化合物誘導体への変換を行い、この中間体からポリカルボニル化合物、含窒素複素環化合物、シクロペンテノン誘導体などの有用物質への変換に成功した。 3.樹脂、精油の有効利用 ニンジンカルスを倍地とした変換反応により、樹脂酸の主成分であるデヒドロアビエチン酸、リモネン等の精油に酸素官能基の導入が可能であることを見い出した。
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