有機化学資源の確保とより安定した供給源への転換に対応するために新しい視点に立ち、石油資源から石炭・重質油系資源への転換のための基礎的有機合成化学の確立を意図するのが本研究班の目的である。すなわち、重質油系芳香族炭素資源に焦点をあて、重質油成分のキャラクタリゼーションと軽質炭化水素化合物への有効な分解反応の研究を川上に置く。さらに、芳香族化合物の官能基変換、ヘテロ芳香族化合物の骨格変換を主体とする、ファインケミカルズ中間化成品の有機合成化学と、重質油の重要な未利用成分である各種縮合多環炭化水素の炭素材料への転換を川下に置き、以下の成果を得た。 1).重質系資源として注目されているオイルシェールのキャラクタリゼーションにより芳香族資源として活用しうることを明らかにし、その乾留条件を検討した(冨永)。2).芳香族化合物の自動酸化による酸素化化合物の合成について研究し、所期の成果を得た(神谷)3).有機スズ化合物を用いた臭化アリールの求核置換により多様な誘導体への変換に成功した(右田)。ペルフルオロ過酸化ジアシルによる芳香族・ヘテロ芳香族へのペルフルオロアルキルの導入に成功した(小林)。4).芳香環を有する不斉配位子を用いて不斉Diels-Alder反応に成功した(奈良坂)。5).電極酸化反応および銀塩触媒を用いた酸化的付加反応により、芳香族アルデヒドの合成、ホモアリル型エキソアルコール、エノールエーテル類の新規合成反応を開発した(平嶋)。6).アザ芳香族の窒素を活用し、アゾニア多環縮合芳香族の合成を行いこれらの物性を比較した。(飛田)7).2-メチルチアゾールから出発した新規へテロ芳香族化合物を合成しその特性を明らかにした(北條)。9).炭化反応における炭素質液晶の成分を明らかにし、炭化反応設計のための基礎資料をえた(持田)。
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