研究概要 |
地殻上層部にあった岩石が、造構運動に伴って地殻深所にもたらされると、その岩石は新しい環境に適合した鉱物組合せの岩石に変化する。また、地下深所から マグマが浅所に上昇貫入して来ると、その周囲の岩石は、その熱的影響をうけて変化する。これらの岩石の変化の過程で、物質が岩石から周囲の岩石に移行したり、外から物質が移入して固定されたりする。これら、岩石の変成過程で物質の移動があることについては、かなり懐疑的な態度を持つ人が多かった。しかし物質の移動機構が明らかになるにつれ、物質移動はそれ程まれな現象ではないことが認められつゝある。この計画研究では、坂野、西山、加納、田切、鈴木、大貫は、天然の岩石の観察と研究から物質移動の実例を詳細に記述、移動機構を解析することに努めた。飯山、赤荻は機構の解析に必要な造岩諸相の熱力学的データーを実験的に取得することに努めた。 【◯!1】三波川変成帶五郎津変斑れい岩帶の輝石グラニュライトに加水反応がおこる時Naが固相に附加されると共に、Clも附加されることが明らかにされた。この時、この岩石の構生鉱物の組合せの変化に伴ってどのような元素の再配分が越るかが明らかにされた。【◯!2】長崎県西彼杵変成岩類中の蛇紋岩類中の緑泥石-透輝石-滑石脈中の累帶構造の生成機構が、計算によってシミュレートされ岩脈中に入って来た溶液と蛇紋岩との物質移動が明らかにされた。【◯!3】双子型カロリメーターによって、20ミリグラム程度の微量の試料を使って、鉱物のエンタルピーをこれまでに得られている諸資料と同程度の精度で求められるようになった。【◯!4】花崗岩質マグマ(人工)と熱水溶液間のclの分配関係の変化が0〜7Kbの圧力域で求められた【◯!5】花崗岩質メルトと熱水溶液の平衡関係の観察から塩類の水溶液の分相が追跡された【◯!6】Wの気相輸送が実験的に証明され、Pb,Znのそれに比し10〜100倍大きいことが示された。
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