各種の成長方法、成長条件により作製された混晶半導体に対して、元素配列等ミクロな構造と電気的・光学的特性等マクロな物性との関連を明らかにすることを目的に研究を行い、以下の結果を得た。 1. 液相エピタキシアル法で、各種成長条件を変えたInGaAs混晶を成長し、構造、欠陥の評価研究に用いられた。 2. 有機金属気相工ピタキシアル装置を組立てた。 3. 分子線エピタキシアル法により各種組成のAlGaAs混晶を成長した。 4. 分子線エピタキシアル法により作製した各種超格子の物性を、ラマン散乱、ホトルミネセンスにより解明した。InAlAs/GaAs歪超格子において、各層界面で原子の四面体配列に歪が生じていること、GaAs井戸層の量子化されたエネルギー準位が約50meV減少することが判った。 5. 溶液輸送引上げ装置を組立て、バルク混晶育成のための温度勾配に関して検討した。 6. 高分解能電子顕微鏡および二結晶法X線により超格子とInGaAs混晶を観察した。DLTSにより、Alx【Ga_(1-x)】Sb混晶でX>0.35の組成において多数のDXセンター類似の欠陥が存在すること、また高純度InGaAs/InP界面に捕獲準位がほとんど存在しないことが判った。 7. 分子線エピタキシアル法無添加AlGaAs混晶にEL2類似の深い準位が存在することが判った。また、局所的な組成ゆらぎが導電率を増すという実験結果が得られた。 8. シンクロトロン放射光EXAFSでInGaAsP混晶の元素間距離を測定し、組成が異なっても【III】族-【V】族元素間距離は変化しない新しい事実が明らかになった。またAs吸収端に混晶固有のダブレット構造があることを見出した。 なお、微視的な歪を考慮した熱力学的計算により、三元混晶の元素配列安定性および短距離秩序が存在する可能性を示し、微視的構造の理論的解明が新たな課題として付加された。 以上の研究により、混晶の本質解明と、混晶の利用限界の打破に寄与しうる多くの新しい知見が得られた。
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