通常の半導体レーザや発光ダイオードの変調法としては、注入電流の変調により、素子の活性層内に存在するキャリア数を変調させるため、そのスイッチング速度は、キャリアの再結合寿命で制限される。具体的には、半導体レーザの場合には、数100psec、発光ダイオードの場合には、10nsec以上のスイッチング時間となる。 本研究は、上記のような再結合寿命による制限を受けない電界制御形の新形発光素子を実現することを最終目標としている。この目標を実現するために、本年度は、量子井戸に垂直電界を印加した場合の物理現象の把握およびAlGaAs系の超薄膜結晶成長装置の準備を中心として、研究を進めた。 その結果、以下のような成果を得た。 (1)量子井戸構造の最適化に関する理論的研究 Separate Confinement Heterosturucture(SCH構造)を用いることにより量子井戸からの発光出力および光増幅係数に対する電界効果をより大きくすることが出来ることが判明した。 (2)フォトルミネッセンスに対する電界効果の実験 GaAs/【Al_(0.7)】【Ga_(0.3)】As単一量子井戸構造を用い、室温および液体窒素温度で、実験し、次のことを明らかにした。キャリアの再結合寿命は電界の増加とともに増大する。また、短パルス電界を加えた場合、光出力のスイッチング時間は、再結合寿命に制限されないことを確認した。 (3)MOCVD装置をほぼ組み上げた。 以上、次年度以降の研究遂行のための基礎固めをおえた。
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