DNAやRNA分子の機能ドメインの形成の研究として、特にRNAプロセシングにおける機能ドメインについて解析を行った。大腸菌のすべてのtRNAの生合成に関与するプロセシング酵素RNasePは、タンパク質サブユニットはRNAサブユニットから成り、この内RNAサブユニットが、RNasePの触媒活性をもつサブユニットである。このRNAサブユニットは、触媒活性の他に、タンパク質サブユニットと複合体を形成する機能をもっているが、これらの機能に関与するRNA分子中のドメインは明らかにされていない。われわれが既に分離しているRNaseP活性の変異株の内、rnpB遺伝子の変異株ts709とts2418について、RNAサブユニットの構造と機能を解析した。ts709は、RNAの5′末端から89番めと365番めのGがAに置換された変異体であるが、この内、下流側の塩基置換は、この変異株の表現型には関係がないことが明らかになった。この変異体RNAは、タンパク質サブユニットとの複合体形成に異常があることが判明したが、その特異的相互作用の部位は、5′末端から89番めおよびその近傍であろう。一方、ts2418のRNAは、5′末端から329番めのGがAに置換されているが、この変異RNAは、触媒活性に欠損があることが判明した。すなわちKm値は、野生型RNAと同じであるが、Vmax値が野生型の1/400である。このことから、この変異部位が、触媒活性に関与するドメインの中にあることを示している。こうしてRNasePのRNAサブユニットのもつ二つの機能に対応した機能領域が明らかになった。その他、転写終結反応の制御因子NusAタンパク質と核酸との相互作用を解析した結果、このタンパク質因子が、ターミネーターの上流に位置するboxAと命名された短い領域を認識して、その上流部分に特異的に結合することを示した。またNusA因子の変異体とboxAとの結合様式を解析した。
|