第1グループは植物遺伝子のクローニングに取組んだ。ゼニゴケ葉緑体DNAに存在する1組の逆向き繰返し構造の解析から、この領域にリボソームRNAオペロン遺伝子群が存在することを明らかにし、16Sと23SリボソームRNA遺伝子のスペーサー領域にもRNA遺伝子の存在することを見出した(大山)。ニンジンのリボソームRNA、コムギのヒストンH3、H4遺伝子をクローン化し、転写開始点、転写調節、3′プロセシングに関与する塩基配列を決定した(谷藤)。イネ培養細胞プロトプラストをアグロバクテリウムのスフェロプラストと処理することにより、イネ細胞の形質転換に初めて成功した実績は特に大きい(庄野)。このほか、フィトクローム遺伝子のクローニング(米田)や、海藻の遺伝子(新田)のクローニングも開始された。 第2グループはベクターおよびトランスポゾンの研究を行った。新しいベクターとして、タバコモザイクウイルス(TMV)を用いたRNAベクターの開発が始められ、その第一歩であるTMV-RNAの操作実験系が確立された(岡田)。Tiプラスミドを用いたDNAベクター(内宮)、カリフラワーモザイクウイルスゲノムを用いたDNAベクター(松井、池上)を利用したキメラ遺伝子の構築が行なわれ、ジェミニウイルスの複製型2本鎖DNAの利用(池上)も始められた。またTMVのコートタンパク質部位のcDNAをTiプラスミドを用いてタバコに導入することに成功し(大野)、少くともmRNAのレベルでは発現していることが確かめられた。植物のトランスポゾンの検出の研究も開始された(大坪)が、まだ見付かってはいない。 以上、本研究班員の主要な構成メンバーは、すでにDNAの研究に長く携ってきている関係上、初年度であるにもかかわらず、かなりの成果をあげることができたと思われる。
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