本特定研究は生命現象を支えるエネルギー代謝の中枢をなすATPの生成と消費に関するエネルギー転換系の分子機構を解明してライフサイエンスの基礎の確立を目ざしたものである。そのため以下の5つの計画研究班を中心に研究が推行された。A:酸化還元エネルギー転換機構班、B:ATP合成機構班、C:能動輸送機構班、D:筋収縮機構班、E:化学認識と情報伝達機構班。 総括班の任務を円滑に推行するために小委員会として、協働委員会、連絡委員会、評価委員会を設けた。本年度はとりまとめの年にあたるので2回の総括班会議を開催、とりまとめの計画に還漏のない様協議した。5月末米国バンダービルト大学教授S.Fleisher及びUCSF教授M.F。Moralesを中心にATPase関係、BCD3班の殆んど全計画研究班が成果を発表し、相互に討論を行い今後の研究の展開についての助言を受けた。結論として本特定研究成果の先進性と独創性が評価され賞賛され大いに激勵を受けた。12月19日より3日間にわたり、ATPaseとやや関係の少なかった残りの2班は研究成果を発表し討論した。12月21日東京(大手町農協ホール)に於て「ATPをめぐる研究の最近の展開」と題する公開講演会を行い約150名の来聽がありATPの生成と消費機構に関する熱心な討議がなされた。和文業績集はB4版333頁のものが2月末に完成し、関係各方面に配布中である。英文業績集は現在印刷中であるが変形B5版ハードカバー約170頁のもので諸外国の一流研究者及び研究機関に送付する予定である。推進者の一人殿村能動輸送班長の急逝という不幸に見舞われたに拘らず、本特定研究は諸外国注視の中で着々と成果が積み上げられたと云える。本邦バイオエナジテイクス研究の国際的比重が高かったので今後の発展が大いに期待される所である。
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