研究概要 |
本研究は、昭和58年度に、第13回参議院通常選挙直後、第37回衆議院総選挙直前と直後の3回にわたり、各回2,500名の有権者を対象にして実施した全国標本調査のデータを主軸に据え、あわせて、昭和51年(JABISS調査)、昭和42年(クボタ・ウォード調査)実施の全国調査データ、その他、公明選挙連盟・明るい選挙推進協会が昭和38年いらい毎回の衆議院総選挙のさいに実施してきた全国調査データを補助的データとして分析した「全国的時系列的」研究である。昭和58年度に実施した3波の調査についての分析の成果は、綿貫・三宅・猪口・蒲島『日本人の選挙行動』(東京大学出版会、 昭和61年1月)として刊行したので、その概要については、同書の「結び」を見られたい。昭和42年のクボタ・ウォード調査デー夕、昭和51年のJABISS調査データと、昭和58年の3波調査データとの時系列分析では、1.政党支持の構造については、昭和42年と51年の間に大きな変化が見られ、消極的政党支持者の出現が目立った特防である。昭和51年と昭和58年の間には大きな変化はない。2.それにたいして、政治シニシズムは、昭和42年と昭和51年の間に顕著な高まりが見られるとともに、昭和51年と昭和53年の間には、政治シニシズムと政党支持の関連の低下が見られる。また、公明選挙連盟・明るい選挙推進協会の総選挙調査データを時系列分析をすると、1.社会的諸属性の投票方向への規定力の一貫した低下、2.後援会加入率の上昇にあらわされた選挙運動要因の増大の二点が認められる。この2.の点は、昭和58年の3波調査データのクロス・セクショナルな詳細な分析の結果とも符合する。しかし、アメリカ連邦議会選挙の調査データの分析と比較すると、候補者要因のウェイトは、アメリカ連邦議会選挙における方が、日本の衆議院総選挙の場合よりも大きいと結論された。
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