本研究は、人工衛星を利用して宇宙から観測されるリモートセンシングデータを、地上で観測されたデータと組合せて、学術的な高次利用を図ることを目的として、大学で行うべき研究テーマを厳選し、研究を進めている。工学的基礎研究として、(1)合成開口レーダ、マイクロ波散乱計などマイクロ波を用いたリモートセンシングの基礎研究を行い、樹木、波浪によるマイクロ波の後方散乱のメカニズムについて新たな知見を得た。(2)データ処理技術の確立のため、(a)高度な利用の前提となる大気効果補正、幾何補正の研究を行うと共に、(b)処理アルゴリズムの検証と体系化を行うための委員会を設置して精力的な作業を開始した。利用技術の開発では、NOAA衛星とLANDSATのTMデータに的を絞って研究を進め、(1)陸域におけるTMデータの利用技術の開発を各種の情報を組合わせて、主題図の作成の限界をきめる重要な要因について基礎的な研究を行い、衛星データの信頼性と精度を明確化するために、TMデータに精密な幾何補正を施した上で、精密な実地探査を行って相模川流域の土地被履分類実験を行った。(2)NOAA衛星を利用した研究では、西岸境界流隣接海域で中規模渦及び海洋循環、外洋擾乱と海洋前線の変動特性、黒潮の流軸変動黒潮沿岸域における水温分布、沿岸水質環境について行い、衛星データ利用の有効性が示された。NOAAデータの利用を促進するため、受信している東大生研からリアルタイムで画像を利用者に伝送する新しいシステムを開発し、迅速にデータの利用が行なえる体制を整えた。気象学における衛星データの利用面では、海洋上の雲の分布と変動特性、雲物理学への利用に関する研究で行われ、気象学の面から大気効果補正手法の開発も行われた。 又、シンポジウムを2回、海洋学への利用、NOAAデータの補正技術、大気効果補正についてのワークショップを開催した。
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