本年度は主として筑波大学の分子生物学設備を整えること、東京大学の形態学的研究設備を充実すること、また他の研究機関との連絡協議、共同研究を通じて実験条件の準備を整えることにまず主力が注がれた。その中で以下の研究成果が現在出ている。 1).従来から続行してきたニワトリミオシン重鎖の各分子種に対体の性格づけと整理を行なった。その中で特にニワトリ砂のう平滑筋ミオシン重鎖に反応するモノクロナール抗体の中に、親平滑筋ミオシン重鎖に反応するが胚の砂のう平滑筋ミオシン重鎖には反応しない抗体を少くとも3種類見出した。それらはいづれもミオシン分子の【S_1】〜【S_2】領域に存在するものであり、ミオシン分子のL-メロミオシン部分に対する抗体ではないことがわかった。 2).ファージベクターλgt11を用いニワトリ砂のう平滑筋mRNAのcDNAライブラリーを作製し、細菌内で発現した蛋白をモノクロナール抗体で検出する方法を用いて平滑筋ミオシン重鎖cDNAのクローンを数個単離した。それらを合わせると合計約3.6kbpの平滑筋ミオシンcDNAを取ることが出来た。現在、その塩基配列を決定中である。またこれら平滑筋のcDNAをプローブとして調べたところ、これは平滑筋のミオシンのmRNAとは結合するにもかかわらず骨格筋のミオシンのcDNAとは結合しないこと、また染色体遺伝子DNA上の平滑筋のミオシンの遺伝子はひとつしか存在せず、骨格筋の遺伝子の近辺には存在しないことがわかった。 3).その他の重要な知見としては以下のようなものがある。 a.胚特有なミオシン軽鎖のcDNAをクローニングに成功 b.α-アクチニンの分子種の構造と機能についての新知見 c.小腸刷子緑ミオシン重鎖に対するモノクロナール抗体を用いて上皮細胞中のミオシン分子の存在形態について検討を行なった
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