自動車保険には自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)と任意の自動車保険(任意保険)がある。自賠責保険は政府管掌の保険で、損害保険会社が取扱いの窓口となっており、人身傷害の補償にのみ使用される。これに対して任意保険は自動車使用者等が任意に損害保険会社等と契約する保険で、物損や人身傷害の補償に使用される。 自動車事故によって人身傷害が発生した場合、先ず自賠責保険の限度内で傷害に対する治療費、休業損害などの補償がなされ、限度を越えた部分について任意保険があればその契約内容に応じて補償がなされる。この二重構造に大きな問題があり、さらに自賠責保険は簡単な書類だけで、単純な手続きで支払われ、自動車保険料率算定会の審査はないのに等しい状態である。損害保険会社は営業成績を上げ、損害をできるだけ小さくするために医師を利用し、自賠責保険の後遺障害補償まで用い、都合の良いように悪用してきた。そのため、現在では一般庶民が悪用し、詐病が多発し、詐欺の温床となっている。医師までも詐病に便乗し、自賠責保険の適正な運用がなされていない。 今回、後遺障害が認定された症例、広島地区598例、岡山地区460例につき、認定に使用された資料に基づいて、四輪塔乗者が12級12号(局部に頑固な神経症状を残すもの)あるいは14級10号(局部に神経症状を残すもの)に認定された広島地区236例、岡山地区228例の妥当性を事故形態と後遺障害発生傷病名、後遺障害診断書の内容から調査した結果、12級12号に認定されたものは例数が少く、十分な検討ができなかった。14級10号の認定では、広島地区の226例中24例(11%)、岡山地区の226例中14例(6%)にのみ、後遺障害の発生した可能性が認められた。 以上のことから14級10号(局所に神経症状を残すもの)は後遺障害から除くべきではないかと思われた。
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