本研究は、プロダクションシステムで代表される従来の知識ベースシステムの構築技術を超えて、さらに柔軟に、かつ、ユーザのインターフェイスを考慮した知的情報処理の開発が必要であるという認識の下に計画された。すなわち、知識ベースシステムの対象となる領域の固有性に対し知識表現の枠組として、新しいプログラム言語概念であるオブジェクト指向を導入して知識利用の方式を柔軟にするというアプローチを採用した。さらにオブジェクト指向の考え方を導入することによって、知識ベースの利用プロセスで生起する推論の流れを、多重に表示することができるマルチウインドウシステムを開発した。 具体的な研究成果は、以下に示す三点である。 1) オブジェクト指向を導入することにより、知識の構造表現、例えば、上位-下位の階層表現が容易になり、知識のモジュール性を保つことができた。 2) オブジェクトの状態管理に対し、利用の履歴情報をメタレベルで制御することによって、推論の説明プロセスや多重表示が実現できユーザへのインターフェイスを向上することができた。 3) 実際の応用として、縁内障医療診断に適用し、コンパクトながら高性能のシステム開発ができた。プログラムのコード数が従来のプログラム言語(LISP)に比べて、約1/3に短縮することができた。 本研究で作成されたオブジェクト指向の知識表現言語はLOOKSと呼ばれ、東理大のバイオシステム研究所のDEC-20上および、PC-9801上で作動している。使用した言語は論理型言語のPrologである。PC-9801のLOOKSはマルチウインドウ機能を持ったワークステーションとして働くように設計された。
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