ウイロイドは裸の1本鎖環状RNAという特異な分子形態を持つ植物病原体で、宿主の酵素によって複製すると考えられている。しかしローリングサークル型の合成により、ウイロイド配列(十鎖)またはその相補鎖配列(一鎖)が2〜4単位タンデムにつながった中間体RNAを経るらしいことの他、ほとんど実験的な解明がなされていない。本研究では、ウイロイドの複製におけるプロセシング、すなわち十鎖多量体RNAより単位長ウイロイドが生成する過程を分子レベルで明らかにすることを目的とした。 材料としてホップスタントウイロイド(HSV)を用いた。すでに我々はHSVの完全長cDNAを2単位以下タンデムに持つクローンに感染性のあることを見出していたが、このcDNAクローンの感染性とウイロイドのプロセシングとの間に相関のあることを明らかにできた。つまり、cDNAクローンがウイロイドRNAのプロセシングに必須の領域を2回以上持っていれば、cDNAクローンに感染性が見出された。 次に、1単位以上2単位以下のHSVcDNA配列を持つクローンを多数作成し、それらを用いた感染実験からcDNAクローンの感染性、つまり、ウイロイドのプロセシングに必要な65ヌクレオチドより成る領域(regionAと名付けた)を限定した。この領域は、現在までに塩基配列の知られているウイロイドの間でよく保存されていた。また、regionAでは安定な2次構造を組ませることができた。プロセシング酵素はこの構造を認識し多量体十鎖RNAを特異的に切断し、単位長ウイロイドを生成すると考えられた。 この仮説を実証する為、regionAに人為的に点突然変異が導入された変異ウイロイドを多数作製した。
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