研究概要 |
イネ種子胚盤上皮細胞(epithelium)で生合成されたα-アミラーゼが細胞内をはこばれて細胞表層(plasma membrare,cell wall)を経、最終的に胚乳に分泌される過程は典型的なエキソサイトシス(exocytosis)現象である。しかもα-アミラーゼはAsn-N-結合型の糖蛋白質であるところからこの実験系は植物細胞exocytosisの機構解明の上から格好のモデル系ということができる。イネ種子のアミラーゼには、Endo-β-Hに対する感受性において明らかに性質を異にする2種類のIsozymeがあることが明らかになった。すなわちEndo-β-H耐性型のR-formと、感受性型のS-formがつくられ胚乳組織に分泌される。これ等2種類のα-アミラーゼは、細胞内【Ca^(2+)】レベルによって調節され、かつまた温度によって両者の分泌の割合が異なることも判明した。つまり高【Ca^(2+)】条件下では専らR-formのアミラーゼが分泌されるが、S-formα-アミラーゼは【Ca^(2+)】レベルに左右されない。したがって前者はregulated pathway、後者はnon-regulated pathwayまたはconstituted pathwayということが出来る。また胚盤組織を低温から高温にshiftするに応じて、生成、分泌されるα-アミラーゼはS-formからR-formへと変動する。これ等のことは、α-アミラーゼの生合成(ポリペプチド鎖の延長反応と糖鎖結合)と分泌とは別個の過程であることを強く示唆しており、種子の発芽の過程においても、たとえば【Ca^(2+)】と温度という環境要因がα-アミラーゼの分泌を微妙にコントロールしている可能性があり、この知見は応用生物学的立場からも興味深い内容をもっている。
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