研究概要 |
本年度の研究を通じて、リボゾーム蛋白質S18のアセチル化に関与する遺伝子rimIの全塩基配列を決定し、トランスポゾンγδの挿入による遺伝子不活性化実験を行ない、さらにマキシセル中での発現を調べ、rimIを含むオペロンの構造を明らかにした。rimI遺伝子は429の塩基対の大きさであり、約16Kdの蛋白質をコードしている。現在S1マッピング法により、この遺伝子の細胞内での転写産物を解析している。同様な方法で、rimIとは独立にクローニングを行なって、リボゾーム蛋白質S5のアセチル化に関与する遺伝子rimJの構造と、その発現を解析した。その結果、これらの2つの遺伝子の支配するアセチル化酵素は、基質特異性が異なるだけでなく、構造(塩基配列)も全く異なっていることがわかった。rimJの遺伝子のより詳細な構造解析は現在進行中である。一方、リボゾーム蛋白質L12のN末端はrimL遺伝子の産物でアセチル化されていることがわかっているが、このrimL遺伝子を染色体地図上に位置づける試みは成功しなかったので、大腸菌の野生株の全ゲノムDNAを制限酵素Sau3Aで限定分解し、得られた約40Kbの断片をコスミドpHc79に挿入し、λファージのin vitropackagingを利用してrimLのクローニングを行なった。その結果、rimLをもつクローンが得られたので、このクローンのプラスミドを回収し、制限酵素地図を作成した。その結果、rimLは約3.2KbのSalI断片に含まれることがわかったので、現在その構造解析を進めている。サザンブロット法での解析の結果、rimLとrimIの間にも相同性のないことがわかった。したがって、大腸菌の3種のリボゾーム蛋白質(S5,S18およびL12)をアセチル化する酵素は、構造的に全く異なっていることになり、進化的に興味深い。
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