研究概要 |
骨髄細胞が骨髄中で分化を括げ、体内に流れ出てゆくまでに、細胞膜はどの様な変化をするのか、について糖脂質分析とその生合成酵素の変動に焦点をしぼって研究することを目的とした。 我々の今までの研究から、ラット骨髄細胞では糖脂質生合成経路に2つの主な系があることを明らかにしてきた。1つはアシアロガングリオシドを経由して【GM_(1b)】を合成する系、もう1つは【GM_3】を経由して【GM_(1a)】や【GD_(1a)】を合成する系である。 今回、アシアロガングリオシドがどの様な分化成熟の過程で細胞膜に表現されてくるのかを抗糖脂質抗体を用いて調べた。用いた抗体はアシアロ【GM_1】,アシアロ【GM_2】,フコシルアシアロ【GM_1】、それに最近我々が骨髄中に発見した血液型B型糖脂質に対する抗体である。これらの抗体と骨髄細胞とを反応させた後、螢光標識第二次抗体で細胞を螢光染色し、これをフローサイトメトリーによって分析する方法をとった。 この結果、これらの4つの糖脂質は、細胞分化のある特定の段階に細胞膜に表現されることが明らかとなった。 赤血球系の細胞では、多染性赤芽球の段階にのみ強く表現され、それ以前や、成熟赤血球にはこれらの糖脂質はほとんど表わされていないことが判った。 好中球および好酸球系の顆粒球では骨髄球と前骨髄球に強く表現されることがわかった。これらの事実は、アシアロがングリオシドが分化成熟のある特定な段階で細胞表面に現われ、分化の進むのに従って糖脂質生合成や細胞膜のアッセンブリがダイナミックに変化していることを示すものであった。
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