昨年度我々が達成した電気ウナギNaチャンネルの全一次構造決定をはじめとして、Naチャンネルを分子レベルで記述しようとする研究は最近大きく展開されつつあるが、新たに解決を要す問題点も浮きぼりにされてきた。例えば動物種によるチャンネルサブユニット構成の違いと機能発現との関連を探ることを目的に、本研究では(1)未だ達成されていないラット脳の本チャンネルに対するモノクローナル抗体の作成と、(2)電気ウナギチャンネル全一次構造上の特定のアミノ酸配列に対するmono-specific抗体の作成を行い、若干の性質を調べた。 (1)モノクローナル抗体の作成: ラット脳から精製したNaチャンネルタンパクを抗原としてマウスに免疫し、ミエローマ細胞と常法通りに融合してハイブリドーマを得た。ELISA法でスクリーニングし、2回の限界希釈法により精製チャンネルタンパクと反応する3種のクローンを確立した。このうち最も抗体活性の高いクローン3GIを用い、その抗体の性質を調べたところ、ラット脳Naチャンネルの〜25OKポリペプチドと結合するが、S-S結合を還元したチャンネルとは結合しなくなることから、高次構造を認識した抗体と考えられる。またこの抗体は電気ウナギのチャンネルとは交叉反応しないことから、両者を識別する目的に役立つ。 (2)mono-specific抗体の作成: 電気ウナギチャンネルのアミノ酸配列の中から、N末端部、C末端部、ゲート機構を構成すると推定される配列、特異的トキシン結合推定部位などを含む10〜15アミノ酸から成るペプチドを合成し、これをハプテンとしてウサギに免疫した。7種の合成ペプチドのうち、現在までに5種については抗体力価も満足すべき抗血清が得られた。これらの抗血清を用い、チャンネルトポロジーの解析等への応用が期待される。
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