不均一系反応つまり界面で起こる化学反応は、多くの場合、均一な溶液でのものとは非常に異なる性格を示す。原子や分子の間に働く力は、たとえ中性分子の間であっても、元来は電気的なものであるから、この事実は、界面での電気的相互作用が均一系でのものとは異なる性質を持っていることを暗示している。この点について理論的検討を行っているが、その過程において、界面に微細なポケット(くぼみまたは割れ目)が存在するとその内部では電気的相互作用が条件により著しく増大または減少することを見い出した。 誘電率を異にする二つの空間が接しているとしよう。その間の界面が平面または曲率の小さい曲面であるとき、その付近に存在するイオン(または双極子)の持つ影像エネルギーは、小さい。例えば、一方の空間が水溶液であるとき、その中の一価イオンが界面近くにある場合の影像エネルギーは、通常、高々1Kcal/molの程度である。双極子では更に小さくなる。しかし、界面に微細な凹凸があると事態は変わってくる。 一方の空間の内部に向う狭く深いポケットが界面に存在すると、そのポケットの内部ではイオン(または双極子)は大きな影像エネルギーを持つ。その大きさは、ポケットの形状・大きさ及び二つの相の誘電率などに依存する。一価イオンの場合、その絶対値は100Kcal/molを超えることがある。双極子の場合の影像エネルギーは、一価イオンの場合より減少する。なお、ポケット内部に連なる空間が水溶液相である時には、一価イオンの影像エネルギーは10Kcal/mol程度以下になるが、なお高い水準を保っている。 このような基本的発見の、基礎及び応用科学における意義を検討中である。
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