昨年度の実績報告書にも述べた通り、魚油投与により、血清中の総コレステロールが植物油の代表であるとうもろこし油投与群に比べ、有意に低下することが認められた。そこで、本年はこの現象に注目し魚油摂取のコレステロール低下作用の機構の解明を中心として研究を続行した。得られた成果は次の通りである。 1.魚油摂取の血清コレステロール低下作用の機構について。 動物としてS、D系の雄ラットを用い、魚油摂取の肝コレステロールの生合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素、コレステロールより胆汁酸への分解の律速酵素であるコレステロール7α-水酸化酵素、血清のLCATへの影響を調べた。 その結果、魚油即ちイワシ体脂摂取により血清コレステロールは約1/2に低下した(とうもろこし油群に対し)が、その際、肝臓のコレステロール生合成もHMG-CoA還元酵素活性が約1/2に低下することからほぼ1/2に低下していることが推察された。また、コレステロールの分解もコレステロール-7α-水酸化酵素活性を指標にするとほぼ1/2に低下していた。また、胆汁酸と抱含しコレステロール生合成を盛んにするコレスチラミンを投与してもこの比はそれほど変動しなかった。 以上のことより、魚油摂取により血清コレステロール値が低下するのは、肝でのコレステロール生合成が抑制されるためと判明した。現在この機構について検討中である。 2.魚油摂取の脂糖脂質組成への影響。 元来、脳にはDHAのようなω-3系列脂肪酸が他の臓器に比べ多く含まれるので、魚油摂取と脳の糖脂質組成との関連について検討した。その結果、脳の各部位での糖脂質の含量、組成にはほとんど影響を与えないことが判明した。現在、リン脂質の脂肪酸組成への影響について検討中である。
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