正常プレアルブミン(PA)と1アミノ酸置換がある異型PAの沈着する家族性アミロイドーシス(FAP)の病態を遺伝子レベルで解明するために研究をすすめ、以下の結果を得た。1)異型PA遺伝子とFAPとの関連、先に確立したFAPのDNA診断法を用い、FAP家系14例(FAP患者11例、無症状者3例)と正常対照者10例につき検索した。この結果正常者全例には異型PA遺伝子を認めなかった。またFAP患者全てが正常及び異型PA遺伝子をもつヘテロ接合体であった。さらにFAP家系の無症状者3例中1例はヘテロ接合体で32才であった。FAPの平均発症年令は33才で、この1例は将来発症する可能性が高いと考えられる。2)異型PA遺伝子の構造、患者肝DNAより作成した遺伝子ライブラリーよりヒトPAcDNAをプローブに異型PA遺伝子を単離した。この異型PA遺伝子の5′上流600bpを含む全エクソン、エクソン・イントロン境界領域、イントロン内オープンリーディングフレームの塩基配列構造を決定し、上記1アミノ酸置換の原因となる1塩基置換部のみが正常PA遺伝子と異なることを見出した。3)マウスPAcDNAの構造解析、FAPの実験モデルマウスを作成するため、マウス肝cDNAライブラリーを作成し、マウスPAcDNAを単離した。構造解析の結果、ヒトとマウスのPAはどちらも127コのアミノ酸残基から成り、基本的に同一構造をもつことが明らかとなった。4)マウスPA遺伝子の構造、マウス肝由来の遺伝子ライブラリーからPA遺伝子を運ぶクローンを単離した。マウスPA遺伝子は、8.5Kb大でヒトと同じく4コのエクソンから成る。また5′上流約190bp及びヒトPA遺伝子の第1イントロン内のオープンリーディングフレームに相当する第1イントロン3′端、約460bpの塩基配列には、ヒト遺伝子と高い相同性が認められた。さらにマウスPA遺伝子の発現を調べ、肝、腎、脳にPAmRnAを見出した。
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