研究概要 |
TNFの抗腫瘍作用には腫瘍細胞に対する直接作用と間接的に腫瘍に壊死をおこさせる間接作用とがあると考えられる。TNFのin vivo,in vitroにおける抗腫瘍作用の時間経過、量的関係、細胞の感受性の違いを見るとTNFの抗腫瘍作用は間接作用が主であると考えられた。また、腫瘍の壊死と血管新生とが関係があるという観察結果から、免疫細胞機能と血管細胞に対するTNFの作用を中心に検討した。TNFとしてはウサぎのTNF及びリコンビナントヒトTNF(γTNF)を用いた。 1.免疫担当細胞に対するTNFの作用:in vitroにおける一次抗体応答、コンカナバリンA、リポポリサッカライドに対するTリンパ球、Bリンパ球の増殖反応に対してTNFは何らの影響をも与えなかった。さらにアロ抗原、蛋白抗原を用いた実験では抗原提供細胞機能に対しても何らの効果をも示さなかった。この結果はTNFが免疫系を介して腫瘍に作用する可能性は小さいことを示すと共に、正常リンパ系細胞に対しては傷害作用を示さないことを意味していると考えられる。 2.血管細胞に対するTNFの作用:ヒト、ウシ由来の大動脈、臍帯静脈、毛細血管から内皮細胞を取り、培養し、これらの細胞の形態、分裂増殖に対するTNFの作用を検討した。 すべての血管内皮細胞はTNF添加後24時間で明らかな形態変化をおこした。内皮細胞はTNFによって分裂増殖が明らかに抑制され、毛細血管由来内皮細胞は48時間以上TNFにさらされると死滅した。対照として用いた繊維芽細胞、平滑筋細胞にはTNFは毒性を示さなかった。以上の成績は主としてウサぎのTNFを用いて得られたが、γTNFを用いても同様の結果が得られている。さらにTNFは培養における内皮細胞を用いたモデル実験において、血管新生を抑制した。以上の結果はTNFは血管内皮細胞に対して傷害的に働き、それによって間接的に腫瘍を壊死に陥れるという機構が存在することを示唆している。
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