1. 〔目的〕:遺伝性甲状腺髄様癌の原因遺伝子の染色体上の座位を明らかにすること。 2. 〔方法〕:1)DNAの多型性(RFLPs)をマーカーとした連鎖解析。2)高精度分染法による染色体分析。3)その他。 3. 〔成果〕:1)連鎖解析。ア、家系の収集。本症好発家系16家系から、85名(うち患者44名)のDNAサンプルを集めた。 イ。RFLPsを検出するためのプローブ。他の研究者から分与を受けたもののほか、独自に9種類のプローブの分離に成功した。目下、これらの新しいプローブの染色体へのマッピングを行いつつあるが、その1つ(OS-4)については18番染色体に由来することを明らかにし得た。ウ、上記の材料を用いて連鎖解析を行いつつある。今までに得られた成績のうち最も重要なものはpR12・21(Dr、Shawより分与)との密接な連鎖が否定されたことで、これはGood fellowらの報告を支持する成績である。このことは後述の染色体分析の成績と共に、本疾患の遺伝子が20番染色体短腕(20p12)に座位を占めるというVorn Dykeらの説が正しくない可能性を強く示唆する。また、われわれの単離したOS-2は1に近いlod Scoreを示し、さらに多くの家系を検討すれば本疾患遺伝子との連鎖が証明される可能性が期待される。 2) 染色体分析。本症患者7名(それぞれ別の家系)のリンパ球を用いて、Vorn Dykeらのいう20pにの部分欠失の有無を検討したが、対照群との間に有意差がなく、本症患者に特異的な変化としての20p12の部分欠失は否定された。 3) その他。末梢血のほかに、腫瘍組織をも入手できた症例については、腫瘍におけるオンコジンの増巾の有無や、白血球DNAにみられたヘテロ接合性の腫瘍DNAにおける消失の有無を、RFLPsを用いて検討中である。
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