1 癌遺伝子V-tgrをクローニングし、挿入変異と欠失変異をそのγ-アクチン遺伝子領域を中心に導入した。これら変異体DNAをNIH3T3細胞にトランスフェクトして遺伝子構造とトランスフォーミング機能との関連を追究した結果、gagおよびprotein kinase遺伝子がトランスフォメーションに必須であること、γ-アクチン遺伝子領域も特定の条件下では必要であることが判明した。 2 先にクローニングしたヒトβ-アクチン遺伝子のコーディング領域より5′上流域4.3Kbpをザブクローニングし、DNA塩基配列を決定して遺伝子発現に関与する構造をしらべた。次いで正常ヒト線維芽細胞およびその癌化細胞におけるヒトβ-アクチン遺伝子の転与開始部位を決定した。一方HeLa細胞抽出液を用いてヒトβ-アクチン遺伝子の転写に成功した。 3 上記の研究で得られたヒトβ-アクチン遺伝子の5′側上流域4.3Kbpとクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(以下CATと略す)遺伝子とを連結し細胞にトランスフェクトして発現されるCAT活性を測定することにより4.3Kbpの強い転写促進活性を明らかにした。次いでこの4.3KbpDNAの種々の長さの欠失DNAを作りCAT遺伝と連結して遺伝子発現に及べす5′側工流域DNA構造の影響をしらべ、いくつかのエンハンサー様領域とサプレッサー様領域が同定された。 4 Go期の細胞に種々の増殖刺激を加え【G_1】期へ移行させる時の初期に発現される遺伝子をβ-アクチンを主にしらべ、更にβ-アクチン遺伝子の発現誘導に関与する因子を同定した。 5 先にクローニングしたヒト心筋アクチン遺伝子の5′側上流域をサブクローニングしDNA塩基配列を決定し構造上の特徴を検討した。次いで上記3のβ-アクチン遺伝子と同様なアプローチで、遺伝子発現におよぼすヒト心筋アクチン遺伝子5′側上流域DNA構造を明らかにした。
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