有機炭素資源を有効に活用するため、高次に立体制御された有用化合物に導く高選択的プロセスの開発が重要と考え、入手容易な光学活性スルホキシドの活用について研究した。今年度は、ホルムアルデヒドジチオアセタールS-オキシドの光学活性体(【1!〜】)を利用する不斉合成反応を中心に研究を逐行した。 1.光学活性【1!〜】の合成: これまでに、【1!〜】がホルムアルデヒドジチオアセタールの不斉酸化やp-トルエンスルフィン酸l-メンチルエステルとメチル(又はトリル)チオメチルグリニャール試薬との反応による方法を開発したが、更にセルロースベンゾイルエステル担持シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーでもラセミー【1!〜】が分割できることも明らかにした。 2.光学活性α-ヒドロキシアルデヒド誘導体の不斉合成: 各種エステル類と【1!〜】から容易に導かれるα-置換β-ケトスルホキシドを塩基性条件下水素化ホウ素ナトリウムで還元すると、高立体選択的にα-ヒドロキシアルデヒドジチオアセタールS-オキシドの一つの立体異性体が得られることを見い出した。この選択性はエステルが芳香族基及び脂肪族基でもよく、適用範囲が広い。この生成物の水酸基をアヤチル基やアリル基で保護したのち、硫黄官能基部位を加水分解して光学活性α-ヒドロキシアルデヒド誘導体を合成した。 3.光学活性α-ヒドロキシアルデヒドを活用する有機合成反応: α-ヒドロキシアルデヒド誘導体のホルミル基の反応性を利用して、β-ジオールやβ-アミノアルコール類の光学活性体に導く反応を研究した結果、高光学純度で達成できた。これらの一連の反応の応用と、して、β-受容体遮断薬であるプロプラノロール及びピンドロールの光学活性体の合成も行った。
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