研究概要 |
種々の高速イオン粒子と固相の相互作用の場に於て、アルカリ金属イオンが種々の有機化学種に付加し、それらがある条件下で表面から脱離してくることがしばしば観測される。本研究は、この現象の機構を解明するとともに、それを新しいイオン化法として応用することを目的とする。 具体的には、(1)カチオニゼーションと呼ばれるこの過程の機構を質量分析法を用いて研究する。特に付加効率とリチュウム親和力との関係を調べる。又(2)この現象の応用として大気圧質量分析法の新しいイオン化法として検討すると同時に、未知物質の質量数決定法としての可能性を追求する。 60年度は、(1)大きい強度で、長時間安定なリチュウムイオンビームを取り出せる表面電離を利用したフィラメント型のLiソースの作成を行った。1【Li_2】O・1Si【O_2】・2【Al_2】【O_3】の組成のシリケートを球状にして、Pt線に固定し、それを加熱(1000℃)することにより【Li^+】イオンを作成する方法を試みた。このLi・ソースの特性は、四重極質量分析計を用いて測定した。セットアップ後加熱を始めてからのLiイオン強度の時間変化は、はじめ複雑な様相を示す。しかも【Na^+】,【K^+】,【Cs^+】等のイオンも観測される。しかし30時間後には、これらのイオン種は観測されないまでに減少する。一方【Li^+】イオンの強度は一定となり、その強度は2×【10^(-7)】A(二次電子増倍管出力)に達する。その後少くとも5〜6日間は安定なビームが得られた。以上の結果は、真空下(【10^(-7)】Torr)での結果であるが、大気圧下(760Forr窒素ガス)でもこのLiソースを作動させ、同様の特性を確認した。並行して、(2)上記大気圧作動の表面電離型Liソースから生成するイオンを直接導入して測定出来る大気圧質量分析計(atmospheric Pressure Ionization MassSpectrometer)の主要な性能を検討した。
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