シリケートの粘度を広い温度範囲で測定するため、ガラス状態および溶融状態に適合する粘度計を作製した。すなわち、ガラス状態に対しては平行平板粘度計を、溶融状態に対してはトーションワイヤーの捩れ弾性を利用した内筒回転型粘度計をそれぞれ自作した。本年度は平行平板粘度計を用いて主としてほうけい酸ソーダの粘度を測定し、けい酸をほう酸で置換したときの粘度に及ぼす影響を調べた。その結果、けい酸ソーダにほう酸を添加すると、はじめ粘度は増加するが、【Na_2】O/(【SiO_2】+【B_2】【O_3】)【〜!_】0.25付近を最大とし、【B_2】【O_3】の添加量がさらに増すと逆に粘度は低下することが観察された。この現象は【Na_2】O-【SiO_2】-【B_2】【O_3】系の相分離傾向と良く対応する。組成は異るが、この系においてほう素の酸素配位数を求めたNMRの測定結果を参照すると、けい酸ソーダに少量のほう酸が添加されたとき、ほう素は【(BO_4)^(5-)】と酸素4配位構造をとるが、ほう酸濃度が増すと、単味のほう酸で安定な【(BO_3)^(3-)】の酸素3配位構造となり、相分離傾向を示すと共に発達したシリカ四面体構造のネットワークを切断し、粘度の低下をもたらすものと考えられる。ただ、Si【O_2】と【B_2】【O_3】の融点が大きく異るため、温度の影響を正しく評価するには融体の測定も不可欠であり、次年度に実施する予定である。 他方、粘度、密度の測定試料と同一ロットの試料につき、その構造解析、とくに注目する金属イオンの周囲の環境構造を求めるため、本年度はX線共鳴散乱強度測定装置のデータ処理機構の拡充を行った。これにより、目的金属イオンの吸収端近傍におけるX線散乱強度測定が容易となり、同時にX線異常分散項の実測も可能となった。この装置により、CaO・【P_2】【O_5】およびμgO・【P_2】【O_5】ガラスの構造解析を行ない、リン酸塩のネットワーク構造はけい酸塩系の場合と極めて類似していることを確認した。
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