研究概要 |
CaO-Si【O_2】-【H_2】O系における水熱反応は、Ca/Si比の違いによって地球上に広く分布する様々な含水カルシウム珪酸塩を生成する。従来、不明な点が多かったこれらの生成反応を、結晶構造の面から系統的に理解することを目的として研究を行った。この系を理解するためには、中間生成物として生じる非晶質様含水カルシウム珪酸塩(C-S-H)の構造を解明することが重要である。そこで、まず最初にCa/Si比=0.5〜1.5、合成温度=150℃〜180℃、反応時間=2時間〜7日の範囲で、オートクーブを用いてC-S-Hの合成を行った。次いで、得られた試料をX線粉未回折法、及び透過型電子顕微鏡を用いて、形態及び構造に関しての解析を行った。その結果、主に次の事柄が明らかになった。 1)X線回折強度を精密に測定した結果、C-S-Hに対して従来報告のなかった位置に回折線が認められた。2)電子顕微鏡による形態観察の結果、C-S-Hは通常Crumpled foilと呼ばれるもの(typeA)と、繊維が配向したもの(typeB)の2種に大別できる。3)Ca/Si比が0.5と0.6の範囲では、typeAのみが現われて、それが時間とともに層状構造をもつ結晶に変化するが、一方Ca/Si比が0.8〜1.5の範囲では最初にtypeAが現れ、次にtypeAとtypeBが共存し、その後鎖状構造をもつ結晶に変化する。4)電子線回折による解析の結果、typeBは7,3Åの周期をもち、構造はtobermoriteと同様のdreier Kettenを基本にしていると推定される。5)回折図形の詳細な解析の結果、typeBは各々のCa/Si比で晶出する結晶の原型をもつ。 従来、適した解析手法が充分でなかったためにC-S-Hの構造に関しては不明な点が多かった。今回の研究の結果、以上述べたように、C-S-Hの構造に関して多くの知見を得、この系の反応の全体像が明らかとなった。
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