研究概要 |
混晶半導体と称される多元系化合物は、その組成を幅広く変え得るので、いろいろな要求に応じた物性値を制御できる可能性を有し、次世代エレクトロニクスに重要な役割を果たすと期待されている。このような混晶半導体の材料設計を可能にするためには、禁制帯幅など半導体特性にかかわる物性パラメータのデータベースに加えて、材料の固溶性や液相・気相との平衡関係など、半導体の作製そのものの基礎となる状態図のデータベース化が不可欠である。そこで本研究では以下に述べるような混晶半導体の状態図のデータベースを作製した。 1.データベースの範囲 本年度は、混晶半導体のうちで、もっとも基本的かつ重要と思われる【III】族のAl,Ga,In,および【V】族のP,As,Sbの計6元素より構成される15組の2元系と20組の3元系すべてを対象とした。また、混晶化合物相と平衡する相としては、混晶の作製に直接関係する液相、ガス相を考慮し、成分元素の1次固溶体は取扱わなかった。 2.データベース化の方法 状態図をデータベース化する方法としては、これまでのハンドブックのように、状態図を図形のままインプットする考えもあるが、本研究では、合金系に出現する各相の自由エネルギーを温度と組成の関数として表わし、これらより熱力学的計算によって状態図を構成するという方法を用いた。この方法では、要求に応じて、その都度状態図を計算しなければならないが、データベースとしては限られた数(高々200個)の熱力学的パラメータのみを扱えばよく、さらに4元系や5元系への拡張も容易である。なお化合物相は、2つの面心立方格子を重ねたB3型格子モデル、液相とガス相は正則溶体モデルにもとづいて自由エネルギーを近似することができた。
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