1.研究目的 混晶半導体は高速動作する発光・受光素子としてのポテンシァリティが高い。次世代のエレクトロニクスの基礎として時定数が10ピコ秒から1ナノ秒の領域における混晶半導体の電気的、光学的なダイナミックレスポンス特性を調べ、それらを支配する物理的機構を明らかにすることによって高速、高効率化への制御指針を得ることを目的とする。 2.研究の方法と成果。 (1)高速光導電応答特性の測定と解析 モードロッキング法又は利得スイッチ法を半導体レーザに適用して得られるパルス幅10〜50ピコ秒の光パルスを2端子光導電素子に入射させる時に得られる応答電圧波形のパルス光強度依存性、バイアス電圧依存性を調べた。また2個の光導電素子をカスケード接続し、電子的相関測定により、RC時定数の影響を抑えた高時間分解能の応答特性測定が可能である。本年度はこれらの測定システムを完成し、GaAsバルク結晶に適用したところ、LEC法で作成したアンドープ半絶縁性GaAs結晶では時定数60〜80ピコ秒の応答が得られた。応答特性と感度特性を組み合わせて解析することによってキャリヤ走行時間効果とキャリヤ再結合寿命を分離する手法を開発中である。 (2)双安定動作半導体レーザのスイッチング特性の測定と解析 非励起領域をもつ半導体レーザの双安定動作領域において電気パルスによってスイッチオン又はスイッチオフする際の過渡特性について実験的、理論的な検討をおこなった。吸収領域の擬フェルミ準位の変化により吸収係数が時間とともに変化することを考慮したレート方程式近似による解析とInGaAsPレーザを用いた実験は良い一致を示した。発振閾値前に利得領域の自然放出光が吸収領域を光励起して部分的に褪色させる効果がスイッチング特性に強い影響を持つと判った。
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