山研究の目的は、種々の混晶系における欠陥準位を過渡容量分光法(DLTS)によって調べ、同時にそれによって混晶特有の原子配列の乱れを解明する新しい評価法を確立することにある。 本年度において得られた主な成果は次の通りである。 1.AlGaAs中の欠陥準位をDLTS法で調べ、ドナー(D)と未知の欠陥(X)の複合体よりなるとされていたDX中心のドナー種依存性を明らかにした。 2.AlGaAs混晶と静水圧下GaAsとにおける伝導帯構造の類似性に着目し、GaAsの静水圧下でのDLTS測定を行い、DX中心は従来考えられていた複合体ではなくドナー自身であること、特殊な伝導帯構造となるときにDX準位が形成されることが明らかにされた。 3.静水圧下でのGaAsの光伝導度の測定を行い、DX中心が浅いドナー準位と深い準位の二面的性格を示すのはその大きな格子緩和現象によることをみいだした。 4.上記2の結果に基づいて、他の混晶系においてもこの種の欠陥準位が存在する可能性があることを指摘した。 以上を要するに、静水圧下でのDLTS測定が、混晶中の欠陥物性を解明するための有効な手段となることがわかった。
|