本研究では、有機金属の光分解を利用した超格子等の混晶多層構造作製技術の確立を目的として、以下の3つの実験を行なった。 (1)トリエチルガリウム(TEG)と金属砒素(【As_4】)を用いたGaAsのMOMBE成長に対する水素及水素イオン添加効果 TEGと【As_4】を用いたMOMBE法により、GsAsを成長した場合、成長層は【10^(17)】〜【10^(19)】【cm^(-3)】のn型となる。本研究では、この成長系に水素を添加することにより、約一桁キャリア濃度が低下し、水素をイオン化した場合にはP型に反転することを明らかにした。更に、この現象を利用して、イオン化電圧のon/offによるpn接合形成に成功した。 (2)トリメチルガリウム(TMG)と【As_4】を用いたGaAsの光MOMBE TMGと【As_4】を用いてGaAsのMOMBEを行う際に、ArFエキシマレーザにより、波長193nmの紫外光を照射し、成長速度の制御を行なった。基板温度500℃においては、TMGが熱分解しないため、通常のMOMBEでは結晶成長が不可能であるが、基板表面に紫外光を照射すると、表面に吸着しているTMGが光化学反応により分解するため、結晶成長が可能となる。本実験では、レーザの繰り返し周波数が0〜1ppsと比較的低い場合、成長速度が繰り返し周波数に比例し、レーザ1パルス当りGaAsが一分子層形成されると仮定した場合の成長速度と良く一致することを明らかにした。これらの結果から、光MOMBE法による選択成長及び分子層レベルでの精密な膜厚制御の可能性が得られた。 (3)TEG、TEAl、TEAsを用いたGaAs、AlGaAsの光MOCBD 全圧8〜10torrにおいて、基板と平行にレーザを照射し、気相で有機金属を分解することにより、GaAs、AlGaAs単結晶を得た。 本年度の実験により光MOMBE法による混晶多層構造作製技術の開発に必要な基礎データが得られた。
|